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光触媒とJIS ~光触媒性能の試験方法1~

2012-11-12

はじめに
 光触媒が最初にブームになったとき、きちんとした試験方法や規格がないまま多くの製品が作られ、粗悪な製品も出回ったために光触媒業界全体の信用が低下することになってしまいました。その反省もあり、光触媒関連の大手企業を始めとして数百社が集まった業界団体「光触媒工業会」(PIAJ:Photocatalysis Industry Association of Japan)が結成され、光触媒性能の規格作りが行われています。光触媒工業会では、基準となる性能評価の方法として、JISに登録された試験方法によって性能試験を行っています。
 以下では一般消費者の方にもなるべくわかり易いように解説を試みます。そのため説明に多少不正確なところもありますが、まずは光触媒性能の規格について大枠を捉えるということで、ご容赦いただければと思います。

(1)JISのあり方
 JISはJapan Industrial Standards の頭文字で「日本工業規格」のことです。よく「JIS規格」と言うことがありますが、この場合は細かいようですが「規格」がダブっていることになります。私もついつい「JIS規格」と言ってしまうのですが。
 JISといえば、JISマークというものがあります。これはJISに適合して認証を受けた工業製品に付けることができるものです。光触媒もJISを使っているのであれば、JISマークを使えばいいのに、と思う方もいるかと思いますが、すべてのJISが認証の対象になるわけではありません。品質(性能)要求基準やその品質(性能)を測定する方法、さらにマーク表示の規定すべてが完備されたJISが認証の対象になります。光触媒に関わるJISは品質(性能)を測定する試験方法に関するものであり、JISマークの認証対象になっていません。光触媒関連のJISは、日本ファインセラミックス協会が事務局となって作成、申請を行っていますが、試験方法をJISにして、性能規格は光触媒工業会で制定してゆくという方
針になっているようです。その規格がPIAJマークです。

(2) PIAJマークの規格となる性能基準の考え方
 光触媒に関係して多くのJISがすでに登録されています。さらに今後は可視光対応型光触媒に関するJISも登録されるため、ますます数が増えてきています。またJISだけでなく国際基準であるISOの登録も進められています。JISやISOの内容については日本ファインセラミックス協会の標準化事業の中に一覧表がありますのでそちらをご覧ください(http://www.jfca-net.or.jp/contents/view/53/光触媒性能評価方法の標準化)。
 光触媒工業会ではこれらJISすべてに対して規格を設けているわけではありません。JISは厳密に規格が作られているので、それに基づいて試験を行う検査機関の負担が大きくなってしまうこと、また検査機関が試験環境を整えても会員企業の要求がないJISでは試験が実施されない、ということなどがあるためです。会員企業からの要望が強くなれば将来規格化されることもあり得ます。現在規格化されているものは、「セルフクリーニング機能」「抗菌性能」「空気浄化機能(窒素酸化物、アセトアルデヒド)」があります。現在規格化が検討されているものには「水質浄化」「抗カビ」「空気浄化機能(ホルムアルデヒド、トルエン)」があります(H24年10月現在)。
 (1)でも述べましたが、JISは試験方法だけで性能基準が示されていませんので、光触媒工業会としての性能基準を設けています(私が所属している工業会の標準化委員会の部会でこの基準について議論しています)。性能は高いほど良いというのは間違いないのですが、かといって基準が高すぎてしまうと誰も認定を受けられないといったことや、不必要に性能が高く高価なものしか認定されない、といったことになってしまいます。もちろん基準が低すぎては以前の状態に戻ってしまい、規格の意味がなくなってしまいます。工業会としては条件に合った使い方をすれば、その効果が実感できる最低限の性能で基準を作ることになります。まずは光触媒効果のないものは排除しよう、といことです。あとはその性能表示の部分で性能の高さを表示してゆくことになります。
 例えば造花のような一般消費者が使う製品で光触媒性能を保証するためにPIAJマークを表示した場合には、あくまでもこの最終商品である造花(造花に使われている代表的な素材)で性能試験を行い、造花メーカーが申請を行う必要があります。ヒカリアクターでPIAJマークを取得しても、それを加工した製品にマークを付けることはできません。そのためカタライズとしてはPIAJマークを取得する必要性をあまり感じていませんでした。しかし光触媒性能を保証する唯一の公的基準がこのPIAJマークであるため、カタライズとしてもコーティング液の性能保証のためPIAJマークを取得してゆくことにしました。まず始めにヒカリアクターH1の抗菌効果でマークを取得しました。以下、カタライズの製品との関わりが深い「抗菌試験」と「空気浄化性能試験」について解説します。

(3) 抗菌試験
 まず抗菌試験の概要について説明します。
 抗菌試験は、ごく簡単にいえば、抗菌加工したサンプルと加工前のサンプル(加工前のものがない場合は抗菌効果のない標準サンプル)に、菌と栄養が混じった液を塗付し一定条件下で培養した後、サンプルから菌を洗い出してシャーレで培養して菌がサンプルにどれくらい残っていたのか測定します。実際に菌数を測定するのには様々な操作を行わないとならないのですが、最終的にはこの菌数を比較することで抗菌効果(静菌活性値と言います、「制菌」ではなく「静菌」です)を評価します。
 サンプルに塗付する菌数は通常10,000~100,000個/mlくらいになっています。これが抗菌効果によってどれくらい減るのかを調べます。菌は分裂して増殖するので、倍々に増えてゆきます。標準サンプルでは1,000,000個以上になります。一方、抗菌加工したものでは100個以下になることもあります。このように級数的に変化し、桁の異なる数字を扱うのには対数を使うのが便利です。普段はあまり使いませんが、例えば100の対数は「2」になります。500の対数は約2.7です。抗菌試験では抗菌効果(静菌活性値)が「2」といった場合、菌数が2桁下がった、つまり100分の1になった、ということになります(菌を99%減らした、と表現することもあります)。
 光触媒の抗菌試験である「JIS R 1702」では、サンプルの形態によって異なる2種類の方法があります。プラスチック板やガラス、タイルといった平板状の製品に適用する「フィルム密着法」と、繊維製品に適用する「ガラス密着法」です。光触媒の試験では試験中に光を照射するので、菌液が乾燥しないようにするための方法で、平板状製品では直接フィルムを被せることで乾燥を防ぎますが、繊維製品ではフィルムを被せただけでは隙間ができてしまうので、繊維製品をシャーレに置いてガラスで蓋をして乾燥を防ぎます。またそれぞれで使う菌の種類も異なっています。フィルム密着法では黄色ブドウ球菌と大腸菌を使いますが、ガラス密着法では黄色ブドウ球菌と肺炎桿菌を使います。
 光触媒なので紫外線を照射しますが、そのときの紫外線の強さは製品の使用状況に応じて4種類の強度から選ぶことができます。一番強い条件が「昼間の窓際」を想定したもので0.25mW/cm2となっており、一番弱い条件は「太陽光が入らない昼間の室内や夜間の室内」を想定したもので0.001mW/cm2となっています。屋外の直射日光の紫外線強度が2~3mWくらいですので、ほぼ想定通りになっています。
 この試験方法を使ったPIAJマーク認証の判定基準が決められています。8時間後において、紫外線を照射したサンプルの菌数と紫外線を照射せず暗所に保存したサンプルとの差(静菌活性値)が2以上というのが基準となっています。ただしこのときの暗所保存サンプルは標準サンプル(光触媒加工していないガラス板や綿布)を選ぶことができます。これはPIAJマークを申請しようとしているサンプルが、光触媒加工だけでなく光がなくても抗菌効果を発現するような製品も想定しているためです。その場合はその製品において光の有無で菌数の差が0.3以上であれば光触媒による抗菌効果があると認められます(10の0.3乗は約2なので、菌数が半分以下になるということ)。すなわち、PIAJマークの認定基準は製品としての静菌活性値は2以上で、かつ光触媒による抗菌力が0.3以上必要ということです。抗菌については使用場所によって(例えば手術室など)は常に抗菌力を持たせなくてはならないことがあるため、抗菌剤と組み合わせている製品があることが前提となっているのです。ただし、カタライズでは光触媒のみの力で抗菌効果を発揮しており、光触媒の抗菌性能だけでPIAJマーク基準をクリアしたものになっています。
 以上、抗菌試験の概要について説明しました。JISについては「日本標準工業調査会(JISC)」のホームページから閲覧することができます。JIS番号(光触媒抗菌試験ならR1702)で検索できます。JISそのものの内容を知りたい方はそちらをご覧ください。

 だいぶ長くなりましたので、今回は抗菌試験までにします。次回、空気浄化性能試験について解説したいと思います。

                                   【室伏】

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