従来の抗菌消臭剤と光触媒の違い(4)

-光触媒の自己回復力-

 前回(3)で従来の抗菌剤が汚れによって性能が低下する可能性について、実際に使われている製品で調べてみました。今回は汚れに対する光触媒の分解除去性能(自己回復力)について調べた結果を報告します。

【汚れモデル】
 光触媒のセルフクリーニング性能を評価するJIS R1703-1「水接触角の測定」では、基材の汚れモデルとしてオレイン酸を塗付します。JISでの塗付量は10×10cmの試料に対して2mgです。今回は汚れモデルとして10×10cmのタイルにオレイン酸を4mg塗付して試験を実施しました。タイルにオレイン酸を滴下し、キムワイプで拭き広げては重さを測り、余分なオレイン酸を拭き取りながら重量増加が4mgになるように塗付しました。

【試料の準備】
 従来の抗菌剤としては無機化合物の基材に銀を担持したものを使用しました。この抗菌剤を光触媒と同様のバインダーを使ってタイルに塗付し、抗菌タイルを作製しました。光触媒タイルはヒカリアクターを塗付して作製しました。これに未加工のタイルを加え、3種類のタイルを準備しました。
 タイルに付着させる方法としては実際に手で触ることも考えましたが、実験の再現性や試料間の差を抑えるために菌の付着には100倍に希釈した牛乳を使用することにしました。これに手のひらや洗面台を擦った綿棒を入れることで菌を繁殖させました(この液からは腐敗臭がするような状態になりました)。実験ではこの菌液をタイル(10×10cm)1枚当たり0.1gスプレーするようにしました。

【従来の抗菌剤との比較】
 まずは汚れ(オレイン酸)を付着しない状態でATP拭取り試験を行いました。3種類のタイルに前記の菌液をスプレーし、初期の値としてタイルの半分を拭き取りました。ATPの値は数万でした。この3枚のタイルを蛍光灯の下に置き、8時間後に残りの半分を拭き取ることでATPの測定を行いました。その結果、光触媒ではATPの値が1/10に、従来の抗菌剤でも1/3に減少していました(図では最初の値を100としています)。
 次に汚れ(オレイン酸)を付着した状態で試験を実施しました。オレイン酸を塗付後菌液をスプレーし、半分を拭き取って初期値を測定後、蛍光灯の下に置いて8時間後に再度ATP値を測定しました。その結果、光触媒では汚れを付着しない状態とほぼ同じ値になっていましたが、従来の抗菌剤では初期の値とほとんど同じ値になってしまいました。
タイル比較

 今回の実験で従来の抗菌剤では汚れによって抗菌性能が低下してしまうことが確認できました。汚れの状態や光の強さなどによって光触媒の性能も変化するため、従来の抗菌剤の方が性能が高い場合もあるでしょうが、光触媒の有機物分解活性による自己回復力は従来の抗菌剤にはない光触媒の優れた点だと思います。

                                    【室伏】

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