光触媒の抗ウイルス試験について

 今年もノーベル賞の季節になりました。そして早速日本人が単独でノーベル医学生理学賞を受賞しました。東京工業大学名誉教授の大隅良典先生です。受賞となった業績は「オートファジー」という細胞内で起きている現象の解明でした。

【オートファジー】
 「オートファジー」とは、細胞が自身の細胞の中のタンパク質を分解する仕組みの一つで、不要になったタンパク質を除去したり、新しいタンパク質を作るための原料となるアミノ酸を作るための働きです。免疫との関わりが深く様々な病気の治療にも役立つ研究であり、それがノーベル賞の受賞理由にもなったものと思われます。

【食べるということ】
 オートファジーの「オート」は「自分」の意味で、「ファジー」は食べるという意味があり、オートファジーは「自食」とも言われます。生物については「食べる」ことに関して様々なことが起きています。「ファジー」に似た言葉が使われている言葉で私の知っているものに「マクロファージ」とか「バクテリオファージ」というものがあります。「ファジー(phagy)」は食べる現象のことでしたが、「ファージ(phage)」は食べるモノのことです。
 マクロファージとは白血球の一種で、体内に侵入してきた細菌や死んでしまった細胞などを動き回って食べる細胞のことです。大食細胞とか貪食細胞などとも言われます。
バクテリオファージ(単にファージということもあるようです)は、細菌に感染するウイルスのことで、感染した細菌の細胞膜を破壊して溶かしてしまいます。
 生物界は食うか食われるかの弱肉強食の世界と言われることがありますが、細胞レベルでも「食べる」ということが様々なところで行われており、重要な機能になっているようです。

【バクテリオファージ】
 ノーベル賞とは関係なくなってしまいますが、バクテリオファージは光触媒に関係しています。光触媒はウイルス除去にも効果があるとされており、光触媒による抗ウイルス試験がJISになっています。インフルエンザ対策などを考えた場合は、インフルエンザウイルスを使って試験をするものなのですが、インフルエンザウイルスを扱うとなると取り扱いがかなりたいへんなものになってしまい、試験費用も高額なものになります。そこで人体には感染せず取り扱いがより安全になるウイルスとして、このバクテリオファージが使われることになりました。そこでバクテリオファージへの効果とインフルエンザウイルスへの効果の相関について某大学医学部の先生などの協力を得ながら検討が進められ、その結果として試験方法として確立されました(JIS R1706)。

 ノーベル賞とはすっかり関係のない話題になってしまいました。ノーベル化学賞では光触媒の第一人者である藤嶋昭先生の名前も毎年挙がっています。太陽光を使って水素を得る方法が実用化すれば確実にノーベル賞を受賞できると思います。さて今年はどうなるでしょうか。

                                【室伏】

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