「減らない光化学スモッグ」という記事を読んで

【光化学スモッグ】
 光化学スモッグというと40年以上前、私がまだ小学校の頃によく聞いていた言葉でした。地方都市の小学校だったので、自分の周りでは光化学スモッグはめったに発生しませんでしたが、都会では時々発生しているのが話題になり、目がチカチカしたりして屋外での活動が制限されるもだというのを覚えています。光化学スモッグは、揮発性有機化合物(VOC)や一酸化炭素、窒素酸化物(NOx)などが太陽の光(紫外線)を受けて光化学スモッグの原因となる光化学オキシダント(主にオゾン)を生成することで発生します。その対策として光化学スモッグの原因物質であるNOxやVOCを含む工場や自動車の排気ガスの規制が強化されました。今では工場や自動車が黒い煙を出している、なんてことはほとんどなくなりました。就職して東京近郊で働くようになっても光化学スモッグ警報なんてほとんど聞くこともなく、光化学スモッグは過去のものと思っていました。ところが昔ほどひどくはないものの今も時々発生しており、規制が強化されているのに光化学スモッグはあるところから減らない状態が続いているということを知りました。

【最近の状況】
 9月5日付朝日新聞の科学面に「減らぬ光化学スモッグ なぜ?対策後も基準値超す汚染物質」という記事がありました。「えっ?そんなことがあるんだ…」という内容でした。近年、汚染物質が国境を越えて飛んでくるようになっていることが時々話題になっています。つい最近もPM(粒子状物質)が飛んできて健康に影響を及ぼすのではないか、といったことがニュースになりました。そういったものが原因で国内の光化学スモッグが発生することは容易に理解できます。日本ではNOxなどが減っていても、アジア全体でみると経済発展に伴いNOxを始め汚染物質が増えています。記事でも春先はこの越境汚染が原因になっていると書かれています。ところが夏は太平洋高気圧の影響で西方から汚染物質が飛来するのを抑えるため、越境汚染では説明できないとのこと。なんと夏の原因物質として考えられているのは植物が放出する成分ではないかというのです。植物が放出する香りなどはVOCの一種であり、春から夏に植物の活動が活発になることでVOCが増えることが夏の光化学スモッグの原因ではないかと推測しています。この記事の内容はちょっとした驚きでした。植物は環境を良くすることはあっても、公害の原因になることがあるとは思ってもみませんでした(原因となる化合物はまだ特定されてはいないようですが)。植物が生成するVOCの量は化石燃料などを使ったときに発生しているVOCの量よりもずっと多いのです。もっとも植物の出すVOCだけで光化学スモッグが発生するわけでなく、人間の経済活動によって発生するNOxなどがあるから公害が起きてしまうのですが…

【身近にあるVOC】
 植物がVOCを放出しているというと意外な感じがしましたが、でも考えてみれば植物の出す香り成分は揮発性の有機化合物なので当然VOCに含まれることになります。VOCと一括りにしても、その毒性の有無などは成分によって大きく異なります。植物の出す成分はほとんど毒性のないものでしょう。さらに香り成分がVOCということであればそれは植物だけでなく、人間が使う香水や香料もVOCということです。植物から発生する量に較べれば無視できる程度のものでしょうが、身近ではいろいろな場面でVOCが発生
していることになります。最近特に香料を使う量が増えているように感じます。ほとんどの洗剤に香料が入っており、無香料の洗剤を探すのが難しいくらいです。柔軟剤に至っては仕上がりの柔らかさではなく、香りで選ばれているとのことです。家庭用の消臭剤でも多くは香りが付いています。これらが光化学スモッグの原因になるとは思いませんが、化学物質過敏症の人にとってはたいへんな状況でしょう。せっかく建材に含まれるVOCが規制されたというのに、外から持ち込まれるVOCは増える一方なのですから。

【VOC低減技術】
 汚染物質を除去するにはなるべく発生源に近い濃度の高い段階で回収・処理するのが効率のいい方法になります。工場や自動車で生成する汚染物質は大気に放出される前に効率よく除去されています。しかし植物や生活の中で発生するVOCは直接大気に放出されているので、効率よく除去するのはなかなか難しい状態になっています。とはいえせめて普段暮らしている室内のVOCは除去しておきたいものです。そこで力を発揮するのが光触媒だと思います。
 室内全体に薄く広がっているVOCを除去するには、空気清浄機を使って室内の空気を強制的に集めながら処理する方法がありますが、それにはフィルター交換などのメンテナンスやファンを動かす電力などが必要になります。できればメンテナンスや電力が不要な方法で対策したいものです。そこでVOCを分解除去する能力を持っている光触媒を室内の壁やカーテンなどに塗付する方法があります。明るい昼間や蛍光灯を点けている室内では自然に対流が起きているので、室内の空気が壁やカーテンに触れることでVOCを持続
的に分解除去します。光触媒の機能を得るためにエネルギーを使う必要もありません。室内に薄く広がったニオイやVOCの除去対策は、光触媒の使い方として最適なものの一つです。
 生活の中で香りが使われることが多くなり、さらに自然界からも様々な成分が発生していることを考えると、生活環境には様々な物質が溢れていると言えます。そういった状況に慣れて暮らすこともできますが、化学物質過敏症の方を始め、少しでもキレイな環境で暮らしたいと願う人も増えています。光触媒を始めとする環境改善技術は今後ますます重要になるでしょう。

                                  【室伏】

Copyright © CATARISE CORPORATION ,All Rights Reserved.
Copyright © CATARISE CORPORATION ,All Rights Reserved.
Top