光触媒によるPM除去について

【現状】
 相変わらずPM(粒子状物質)のことが話題になっています。2月には警報が出たところもたくさんあったようです。PMは発生源で除去するのが一番なのですが、それでも完全に除去するのは難しいことですし、国境を越えてくるような場合の対策は一筋縄ではいきません。まずは外出を控えるとかマスクをする、あるいは空気清浄機を使うといった対策をするしかないのが現状です。
 そこで環境改善技術の一つである光触媒でPM対策をできないか、という技術課題が挙がってきています。
 光触媒は有機物を酸化分解する力があります。PMは炭素成分を含んでいるのですが、水素をほとんど含まないグラファイトのような状態で「無機炭素化合物」などと呼ばれることもあり、光触媒で酸化分解するのは難しいのではないか、という意見もあります。本当はどうなのか実験で確かめたいのですが、問題があります。光触媒の環境改善性能については抗菌や抗ウイルス、消臭、空気浄化といった分野ではJISを始め、試験方法が確立しています。しかしPMの除去性能については試験方法が確立していません。空気清浄機の場合は粒子径がほぼおなじということで、タバコの煙を使った試験を行っているようですが、光触媒の場合は粒子径というよりも粒子の成分・構造が問題になるためタバコで試験という訳にはいかないでしょう。ま
たPM自体も発生源によって様々な組成があるため、なかなかこれでいいというものは決められないかもしれません。ディーゼルエンジンから発生するPMであれば、ディーゼルエンジンを使った試験が考えられますが、それでも簡単に行える実験ではありません。
 そこでとにかくPM除去に関して何らかの手掛りだけでも得ようと思い、次に述べるごく簡単なモデル実験をしてみました。

【簡易的なモデル実験】
 今回の実験では「ろうそくの煤」を使ってみました。実験は簡単で、火を点けたろうそくの上に光触媒を加工した試料をかざして煤を付着させ、それにブラックライトで紫外線を照射して煤の状態が変化するか確認する、というものです。そのため最初の煤の付着量や紫外線照射によって分解した煤の量といった定量的な測定はできていません。
 今回はいくつかの仕様で試料を作り実験を行いました。約1mWの紫外線を長時間照射することになりましたが、照射前後ではっきりと煤が薄くなっているものが観察できました。そのときの写真を次に示します。
ろうそく煤実験写真
写真1;タイル加工品の初期(上が未加工タイル、下が加工タイル)
写真2;写真1の紫外線照射後
写真3;煤を薄く付着した加工品タイル
写真4;写真3のタイルに紫外線を2日間照射した状態
写真5;写真3のタイルに紫外線を4日間照射した状態
写真6;綿布加工品の初期状態
写真7;写真6の紫外線照射後

【光触媒による煤の除去】
 写真のように目で見てはっきりわかる状態になるには時間が掛かりますが、光触媒によって煤を除去できることは確かめられました。空気中に浮遊しているPMの量はこのように真っ黒になるような量ではありませんので、厳しい条件だったとも考えられます。PMにはいろいろな成分が含まれており、すべてに効果があるとはいえませんが、今回の実験から光触媒はPM除去に対してある程度の効果は得られるのではないかと思います。
 さらに今回の実験はあまりに単純なものだったので、今後さらに詳細な実験ができるように検討して行きたいと思っています。

                                    【室伏】

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