光触媒の応用分野

-抗菌消臭や防汚以外-

 弊社の光触媒製品は室内で使うコーティング液であり、抗菌や消臭といった機能が得られます。弊社の製品ラインアップにはありませんが、屋外で使う光触媒としては防汚機能を得るための塗料や建材などがあります。これらは既に実用化され、新聞記事で紹介されたりテレビコマーシャルが流されたりしています。そこで今回はこれらの分野とは異なる分野に応用されようとしている光触媒について解説してみようと思います。

水処理分野への応用
 抗菌消臭や防汚といった機能の他に研究開発が進められている分野に水処理があります。かつて国外(主に欧州)で光触媒が取り上げられ始めた頃、水処理への応用が盛んに検討されたようです。ただ当時はまだ光触媒の試験方法などが確立されていない頃だったため開発もかなり杜撰だったようで、水処理システムとして効率の良いシステム構成としての取り組みが不充分で実用化することができなかったようです。その後欧州ではビルの防汚などに光触媒が使われるようになりました。また最近ではミラノ万博のイタリア館で光触媒が空気浄化のために採用されていました。また現在では水処理に関する性能を試験するためのJISやISOといった規格もできています。
 水処理というと下水や工場排水などの処理が思い浮かびます。この場合は大量の水を短時間で処理する必要があり、光触媒だけで有害物質を除去するのはかなり難しいと思われます。現在も研究開発が進められていますが、もう少し小型の水処理技術の開発も進められています。光触媒は太陽光を利用でき比較的メンテナンスが容易なため、電気が使えない開発途上国や災害発生地での飲料水製造への応用が考えられています。フィルターで泥などを取り除いたあと、光触媒で細菌や有害物質を除去しようというものです。難しい技術が無くてもメンテナンスができる安価な装置が求められており、利益追求よりも国際貢献に資する技術であり公的研究機関を中心に開発が進められているようです。
 また農業分野への応用も検討されています。農業では肥料や農薬を使っていますが、これらの廃液が発生する場合、何らかの処理をして肥料や農薬を取り除いてから処分する必要があります。一例として、土壌を使わず必要な栄養分などを含む培養液を流すことで与える養液栽培というシステムがありますが、この農法では作物に吸収されずに残った養分などを含む養液が必ず発生します。この養液処理に光触媒を使おうという開発が神奈川県で行われました。詳細はそちらの報告をご覧ください。本研究では養液処理がうまくでき、クローズドの状態で養液を循環するシステムが開発できたようです。その後も現在に至るまで多くの研究機関が農業分野への光触媒の応用に取り組んでいます。

開発課題
 これら水処理分野の研究開発では大気中で使う場合とは条件が大きく異なり、水中で使うこと特有の課題が出てくるものと考えられます。農薬や養分といった分解対象が異なるのはもちろんですが、光触媒に使う材料も注意しなくてはなりません。光触媒の主原料である酸化チタンは水に溶けませんが、活性向上のために加える材料も水に溶けるようでは水中で活性が低下してしまいます。光触媒反応中に化合物形態が変化して溶解してしまうこともあり得ます。また耐久性についても空気中とは異なる劣化条件に晒されます。さらにそれぞれの材料の性能向上だけでなく、システムとしての効率向上などの検討も必要になります。
 カタライズのヒカリアクターHシリーズは水処理にも使えるのではないかと思います。しかし水処理システムとして考えた場合、前述のように様々な技術開発が必要なため、今のところ手が付けられない分野となっています。
 とはいえ水処理分野は光触媒の特長が活かせる分野でもあり、技術動向調査を行いつつ将来的にはぜひ取り組んでみたいと考えています。

                                    【室伏】
光触媒にご興味のある方は、ぜひ当社開催の「光触媒説明会」にご参加ください。
説明会のご案内と参加申込書(PDFのダウンロード)

参考リンク先
 光触媒による農業廃液の浄化(神奈川科学技術アカデミー)

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