新聞の光触媒特集記事より

 1月25日の日経産業新聞「知を拓く」のコーナーに光触媒の記事が掲載されました。藤嶋先生の業績や最近の光触媒技術動向などが紹介されています。今回はその記事に取り上げられている技術の中でちょっと面白い分野に応用されているものについて解説しようと思います。

【科学で社会に貢献する】
 記事で紹介されている藤嶋先生は光触媒の第一人者ですが、技術で如何に社会に貢献できるかを常に考えていられるようです。神奈川科学技術アカデミーの理事長をされていたときも、アカデミーのあるかながわサイエンスパーク(KSP)内に光触媒ミュージアムを作って一般に光触媒技術を公開していました。また夏休みなどには子供向けのサイエンス教室を開き、光触媒技術を楽しく学ぶ場を設けていました。研究者を教育するだけでなく、一般社会に向けた教育にも力を注いでいました。
 また先生の著書の一つに「天寿を全うするための科学技術-光触媒を例として-」というものがあります。この本は単なる技術解説書ではなく、人が健康で天寿を全うできることに科学技術は貢献しなくてはならないといった思いの詰まったものになっています。
 そのような藤嶋先生の思いから考えられているのが、「蚊の捕集器」で、今回の新聞記事でも紹介されています。地球でもっとも人類を殺しているのが「蚊」だということはだいぶ知られるようになっていますが、その蚊を光触媒を使って捕集しようというものです。

【蚊の捕集器】
 記事では光触媒を使ってアルコールを分解し、生成した二酸化炭素(CO2)で蚊をおびき寄せて捕集するアイデアが紹介されています。そこでこのような光触媒を使った蚊の捕集器が販売されているかインターネットで調べてみるといくつか販売されているのがわかります。おおまかな構成は、虫を誘引する照明と集まった蚊を吸引して捕集するためのファンと光触媒プレートからできています。特にアルコールを添加する装置は付属していないのですが、光触媒によって二酸化炭素を発生して蚊を誘う、という説明をしている装置もあります。ただ、通常の大気中に含まれる有機物を分解して発生する二酸化炭素はごくわずかなため、蚊を誘引するほどの効果は得られないのではないかと思います。人間の吐く息には1%程度の二酸化炭素を
含んでいますが、普通の大気では有機物はppmオーダー以下の濃度しかありません。
 虫を誘引する照明は紫外線を放射するので、「ついでにその光を利用できる光触媒を設置してみました」といった程度のものではないでしょうか。これらの装置では蚊を集める効果の大部分は照明によるもので、二酸化炭素による蚊の誘引効果はごく僅かなものと考えられます。記事のようにアルコールを使って二酸化炭素を発生するような装置でないと、二酸化炭素による蚊の誘引効果は得られないと思われます。
 とはいえアルコールを添加するとなるとその分装置が複雑になる上、アルコールの補給が必要になるため機能を維持するための手間も増えてしまいます。実際に装置として販売するためには難しい面もあるでしょう。
 今後日本も温暖化してマラリアを媒介する蚊も日本で繁殖するのではないかと言われています。デング熱の話題も記憶に新しいものです。蚊の駆除はますます重要になってゆくでしょう。殺虫剤を散布する方法もありますが、それでは他の昆虫も殺してしまって生態系に影響を与えたり、人体への悪影響も懸念されます。新聞記事に記載されている光触媒を使う駆除方法は人体への安全性などからも、充分検討に値する方法ではないでしょうか。

 今回も前回に引き続き、当社の光触媒製品には直接関係のない話題を紹介しました。光触媒技術の応用範囲の広がりを知ってもらうためにも、今後とも自社製品関連分野に留まらず様々な話題を取り上げて行きたいと思います。

                                   【室伏】

光触媒にご興味のある方は、ぜひ当社開催の「光触媒説明会」にご参加ください。
説明会のご案内と参加申込書(PDFのダウンロード)

Copyright © CATARISE CORPORATION ,All Rights Reserved.
Copyright © CATARISE CORPORATION ,All Rights Reserved.
Top